スピリチュアルな健康:「いのちの乳房~乳房再建に挑んだ女神たち~」を見て

いのちの乳房

「いのちの乳房」:撮影はアラーキー、荒木経惟

先日、「いのちの乳房~乳房再建に挑んだ女神たち~」という番組を見ました。

乳がんによる乳房摘出の後、乳房再建に挑んだ女性たちの写真集、「『いのちの乳房』-乳がんによる「乳房再建手術」にのぞんだ19人-」をめぐるドキュメンタリーです。

乳がんにかかる女性は年々増えており、女性にとって乳がんは他人事ではありません。乳がんの治療では乳房摘出手術が行われることも多いのですが、患者さんは、女性性の象徴ともいえる乳房が無くなったり、傷つくことで、大きな精神的苦痛が残ります。「乳房再建」はシリコンや自らの脂肪やその他組織を使用して乳房を再建する手術で、乳がん患者さんたちの心の苦しみを和らげ、QOLを高める手術です。
しかし、乳房再建手術を受ける人は、乳がん手術経験者のわずか8%。「乳房再建手術」はまだ認知度が低く、決してスタンダードな方法ではないのです。
そこで、「乳がんを宣告され混乱のまっただなかにいる女性たちや、手術で乳房をなくし、女性としての喪失感にとらわれている人たちに向けて、「乳房再建手術」についての情報を目で見る形で伝える写真集」として発行されたのが『いのちの乳房』。写真集を企画し、自らモデルになった真水美佳さんは、「再建までが乳がんの標準治療になってほしい」と語ります。

番組の中で、乳房再建をいつするかには賛否両論があるという意見がありました。乳房摘出と同時に乳房再建をする横浜の病院が紹介される一方で、「医師としては急いで乳房再建することは必ずしも賛成できず、化学療法が落ち着くまで2年くらいは待った方がいい」という意見を持つ医師も紹介されていました。
私は、この「慎重派」の医師のコメントを聞いて、かなりがっかりしました。要するに「体を大事にしろ、体を治せ」言うのです。ガンは敵だ、敵を倒すためには2年くらいおっぱいなんか無くても我慢できるだろう、命の方が大切だろう、そう言うのです。
こういうのが、「典型的な(外科的)医師の考え方」なんでしょうが、肉体的な健康の事ばかり言っていて、WHOが「健康の定義」の中で肉体の健康に加えてに謳っている「精神的やスピリチュアルな健康」の事は全然気にしていないみたいだなぁ、と非常にがっかりするとともに、逆に、これが一般に私たちが接する医師なんだな、と感じた次第です。

確かに命は大切です。でも生きていればいい、ってわけじゃない。凛々しく、誇りを持って、意味のある時間を送る事が大切なんだと思います。
多くの女性にとって、乳房は重要なものだと思います。その機能だけでなく、乳房の象徴するもの全てを含めて重要だと思うのです。ですから、がんで乳房を摘出するというのは「おっぱいが無くなった」だけではなく、もっと大きなものを失ったと感じるに違いないのです。「乳房が無ければ意味のある時間が送れないというわけじゃない」「おっぱいが無くても強く生きている人はいっぱいいる」そう言うのは簡単ですが、それは違うと思います。
乳房再建は、シリコンを入れたり、自らの脂肪を使ったり、人造的な方法である事に間違いはありません。乳房を再建しても、がんにかかったこと、がんで乳房を摘出したこと自体が無かった事になるわけではないのです。それでも、鏡の中に映る自分を見るたびに、何度も、何度も、自分が女性として傷物になったような気がすると感じる人がいるのなら、乳房を失った自分と折り合いをつけていく為にそれを必要とする人がいるのなら、乳房再建の意味はもっと評価されるべきなのではないかと思うのです。

“スピリチュアルな健康:「いのちの乳房~乳房再建に挑んだ女神たち~」を見て” への3件のフィードバック

  1. 関 まゆみ より:

    友人が昨年初夏に乳がんで両胸を手術しました。初秋には、乳房までは再建手術しました。
    私は鍼灸指圧マッサージ師で、手術後に肩腕の挙上困難になった彼女の治療担当させて頂いております。
    先般その治療中に、彼女が再建手術のこの先の不明点や不安を口にしました。
    ドクターは、大体こんな感じになるという口頭説明のみだそうです。彼女は両方なので、見本になる自身の片側も無く、また病院にも立体見本は無く、手術後の乳輪や乳頭などの写真も見られない為、非常に気にしています。
    彼女は、両胸手術を再建した方がいらしたら、お話を伺いたいと探していますが、今まだ見つかりません。
    私も、できる限り彼女の希望に添いたいと思い、彼女の意向や許可を確認の上、探しております。
    ご協力頂ける方がいらしたら、ご紹介頂けませんでしょうか。もちろん、秘守義務は心得ております。
    大変恐縮ですが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

    • admin より:

      こんにちは。コメント有難うございました。
      友人の方は肉体的にも精神的にも大変な時期を過ごされているのでしょうね。
      私は喪失とそれに伴うグリーフのトレーニングは受けてきていますが、医療関係の者ではありませんし、乳房再建について特に詳しいわけではないんです。残念ながら。
      でも、このトピックは実際に乳房再建の経験をされた方や医療関係者の方にも見て頂けると思いますので、そういった方から良い情報が寄せられることを期待していますし、また、必要であればお伝えすることが出来ると思います。

  2. 佐藤 弥生 より:

    はじめまして、私は昨年夏頃、乳がんが発覚し、その後細胞診等経て、早期ですが広がりがあるため、右胸全摘出と診断されました。
    その後、再建のことを色々調べていく内に、私が通院している、東京都立駒込病院は、乳腺外科と形成外科の連携がよく取れていることがわかりました。
    再建のことを乳腺の先生に伺ったところ、 <では、形成の先生のお話を聞いてみますか?> とスムーズに予約を取ってくれました。
     形成の寺尾先生は自分が執刀した、再建乳房の写真をパソコン画面で色々見せてくれました。 
    結構きれいにできていましたが、自分の場合はどんな風になるのか想像しながら見ていました。
    また、毎日新聞社から出ている、<再建手術、承ります。 寺尾保信著>の本をみていただくと、先生が執刀した様々な再建例が記述されています。その本の中に、両胸を再建された方の例もありましたので、参考になるかと思います。
     
    私は。12月1日に右乳房切除手術と同時に腹直筋遊離皮弁再建術を行いました。
    私の場合は、手術自体はうまくいったのですが、お腹の皮と胸の皮がつながりが悪いのか、くっつきが悪く、縫った後がジュクジュクしてしまいました。  また、感染を起こして、入院期間が随分長くなりましたが、結果的には、同時再建でよっかったと思います。  胸に傷は残りますが、胸のふくらみがあると言うのは、うれしいものです。
     私は乳腺で都立駒込病院に通院していましたが、ここは当たり前というか、患者さんが望むなら、普通に再建を行っている
    病院なので、他の病院では、再建できる形成外科の先生が少ないということを知り、この病院でよかったと思いました。
    一度、駒込病院の寺尾先生の診察を受けられたらよろしいかと思います。私的には、テイッシュエキスパンダーで皮膚を伸ばしてから自家組織お腹から再建していただいたほうが、胸の傷が目立たなくてよかったかな?と思いますが、時間がかかりますよね?
     術後、まだ三か月経っていませんが、まだ、お腹はツッパリ、胸のまだまだ痛かったり違和感はあります。ただ、再建してよかったかと聞かれれば、痛かったり大変な思いはするけど、やっぱり胸があるほうがいいかな?

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