死産を考える(1):グリーフ研究から


グリーフケアの勉強をする中で驚いた事の一つに死産の数の多さがあります。日本の周産期の死亡率は世界第一の低水準にあります。しかし、2010年の厚生労働省の統計によると、法的な死産の定義である12週以降の死産は27,000件と報告されています。近年、自死の数が年間30,000件を超えた事が話題になり、グリーフケアの観点からも、その遺族の悲しみには心を痛めていましたが、それに近い数の家族が、子供の死を経験しているのです。
そして、これだけ多くの人が死産を経験しているのに、そのことは一般的には知られてるように思われません。ここには、死産の「沈黙の性質」があるのではないか、と感じます。流産もそうですが、周産期の死は「公認されないグリーフ」(詳しくはこちら)になるケースが多くあり、語られない死の様相を呈する事がしばしばです。 続きを読む

喪のジュエリー:ジェットジュエリーとヘアージュエリー


ビクトリア女王:黒いドレスにジェットの装飾が施されている

9月3日、私は勉強も兼ねて、数年ぶりにジャパンジュエリーフェアを見に行ってきました。そこで、ジェットジュエリーを展示しているブースを発見し、思わず立ち寄る事になりました。ジェットのジュエリーは博物館などで見たことはあるものの、手に取るのは初めて、初めて間近に見て、触れて、その重量感や質感を堪能する事になりました。

私が初めてジェットジュエリーの事を知ったのは、数年前に、講演のために「故人の体の一部を身に着ける」事の歴史的な変遷を調べていた時の事でした。
ジェットは日本では黒玉と呼ばれるもので、地中深くに堆積した植物が化石化したもので、それは軽く、あくまで濃い漆黒の黒い宝石。質感はメノウや象牙をイメージしていただくとよいでしょうか。ジェットは研磨により非常に美しい艶を持ち、またその艶が長持ちすることで知られています。 続きを読む