ウィーン葬儀博物館訪問記


玄関先にある「起き上がる棺」:いったい何のために、と思わせる一品

2010年11月、私はスイス本社にて行われたアルゴダンザのアジア地区パートナーミーティングに参加し、その際にスイスのスタッフに勧められたのがきっかけで、私はウィーンの葬儀博物館を尋ねる事にした。迎えてくれたのはひげが素敵で情熱的な館長のウィッティゴ・ケラー氏。アルゴダンザから来たというと非常に歓迎してくれ、案内をかってくれた。

この葬儀博物館の正式名称はベスタトゥングス・ミュージアムといい、ウィーンの葬儀社ベスタトゥング・ウィーン社の付属博物館である。ベスタトゥング社は、1907年にウィーンが市としての葬儀サービスを提供する必要があると感じたことから、当時80以上あった民間の葬儀社を合併させて誕生した市の葬儀サービスが起源。現在は会社形式をとっているが、その精神は変わらない。この種の葬儀社としてはヨーロッパ最大で、正社員1000人弱を抱え、棺の製作も自社の子会社に行わせている。

展示してあるのは葬列に用いられた正装、旗、様々な棺、骨壷、などなど。館長によると「ウィーンの葬儀は宗教的なもの、というよりも、現世の地位や名誉、故人の達成したものの表現という意味合いが強いのではないかと思っています。ですから、どういう葬儀をするかというのは非常に重要で、現在でも地位が高かったりお金持ちの人は随分立派な葬儀をされますよ。」ということだ。

この博物館で一番の人気の展示物は「まだ生きてるアラーム」とでも言うべきもの。土葬の際に棺の中で生き返ってしまうことを恐れるあまり、このような方法が考えられ、かつては自分の時にはぜひ使ってくれるよう遺言を残す人も多かったという。この方法は、死後、棺をすぐには埋葬しないで48時間安置室に置き、遺体の腕に紐を結び、それが動いたら墓地管理人のダイニングルームでアラームが鳴る、というもの。死後硬直やそれが解けることで「結構誤報があった」そうだが、生き返った例は無いらしい。

ケラー館長の「まだ生きてるアラーム」実演
ここではベルがすぐ隣にあるが実際には距離が離れていてベルの部分が墓地管理人の部屋に設置される。

さらに面白いのは、こういった方法は費用もかかり、すべての人が依頼できるものではなかった為、その代わりに「亡くなったら心臓を2回両刃の剣で刺して『確実に死なせる』」方法もあったと言うことだ。今でも希望があれば出来るそうで、ケラー氏によると「最後は12年前にやりましたな。人の死は大切ですから、私たちは非常に幅広いリクエストに応えられるようにしているんです。」ということだ。

火葬に関する展示のコーナーにメモリアル・ダイヤモンドの展示を発見した。ケラー氏によると、この博物館の訪問者の8割くらいの方がダイヤモンドを製作できることをご存知のようだ、との事。

最後にケラー氏は私にこう言った。「実は、私の義母もアルゴダンザのダイヤモンドになっています。いつも私たち夫婦の旅行に連れて行っています。素敵なことだと思いますよ。」

厳かながら華やかな 葬列用の衣装

一般人用「確実な死」 の道具

アルゴダンザの 展示を発見

Bestattungsmuseum
Goldeggasse 19
1041 Wein
www.bestattungsmuseum.at
開館時間:年中無休、12:00-15:00、事前に電話予約の必要あり。
入場料:4.5ユーロ (団体、学生割引あり)

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